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3事業を100%電子で実施。草の根の普及活動が支える松本市の給付DX

CASE
2026.04.24

住民向け給付ポータル

    3事業を100%電子で実施。草の根の普及活動が支える松本市の給付DX

    長野県松本市

    長野県第2の都市で歴史と豊かな自然を誇る街・松本市。教育機関や医療施設が充実しているため、近年は魅力的な移住先として注目を集めています。

    松本市では令和6年度から翌年度にかけて、子育て支援クーポン、消防団施設利用補助クーポン、物価高騰対応クーポンを相次いで「e街チケットポータル」で電子化。市民の生活を効率的にサポートしています。

    松本市の電子クーポン導入の経緯や運用の実態について、松本市の職員の皆様にお話しいただきました。

    • DX推進本部:次長 島村守さん、主任 石神真有子さん

    • 保育課:係長 等々力啓さん、主任 原俊輔さん

    • こども育成課:課長補佐 川上紀子さん、主事 熊井唯さん

    • 消防防災課:主任(消防主任)平賀達也さん

    • こども福祉課:課長補佐 高頭千江子さん

    目次

    導入対象の事業概要

    • 松本市子育て支援クーポン
      市内の子育て世帯の経済的・精神的負担の軽減を目的に、ファミリーサポートや一時預かりなど各種子育て支援サービスに使えるクーポンを配布。従来は紙で発行していたが、令和6年度から電子化した。

    • 消防団施設利用補助クーポン
      ボランティアとして活動している消防団への福利厚生として令和7年度から発行している電子クーポン。提携している映画館、美術館、温浴施設、エンターテインメント施設、飲食店で利用できる。配布額は10,000円分で、1円単位で利用可能。

    • 松本市こそだて支援電子クーポン
      物価高騰のあおりを受けている子育て世帯を支えるため、令和7年12月から令和8年2月まで実施。18歳以下の子ども一人につき5,000円分が配布され、1円単位で利用可能。市内のスーパー、ドラッグストア、コンビニ、衣料品店などで利用可能。

    導入前の課題

    ・「松本市子育て支援クーポン」は4つの課にわたり、手続きのために窓口を回る利用者と集計を行う行政の双方にとって重荷だった
    ・従来の消防団員向け割引カードは店舗の善意に依存しており、持続可能性の面で課題があった
    ・物価高騰対策において、住民にいちはやく給付を行き渡らせる必要があった

    成果

    ・「松本市子育て支援クーポン」は全利用者が電子クーポンを希望。精算等に関わる行政・施設の事務負担が大幅に軽減された
    ・消防団員向け福利厚生を電子クーポン化したことにより店舗負担を解消し、施設側から加盟希望が届く好循環が生まれた
    ・既存のシステムを使うことで「松本市こそだて支援電子クーポン」を迅速に配布することができた

    複数課のクーポンを一本化。利用者・行政ともに利便性が向上

    ――松本市が「e街チケットポータル」を導入した経緯を教えてください。

    写真右からDX推進本部 次長 島村守さん、主任 石神真有子さん。全庁的なDX推進を担う

    島村さん:松本市には「デジタルシティ松本」という構想があり、デジタルファーストで様々な業務をペーパーレス化しているところです。市民の生活支援においても同様にDXを進めたいと考えていました。電子クーポンの導入は複数年にわたり検討していたのですが、まずは紙で発行しているクーポンのデジタル化から着手することにしました。

    最初に「松本市子育て支援クーポン」を対象としたのは、当時4課が計8券種のクーポン発行をしており、利用者が申請のため各課を回らなければならない状況を改善する必要があったからです。

    石神さん:複数のクーポンを印刷して配布することは、行政側にも負担になっていました。デジタル化によって、利用者も行政も利便性が向上することが見込まれました。

    クーポン券面に子どもの名前を表示することで、きょうだい間の誤利用を防止

    ――実際に電子クーポンを導入したことで、利用者の反応はいかがでしたか?

    石神さん:運用する前は「紙のクーポンを利用したい」という人が何割かは出てくることを想定していました。電子クーポンを利用するためには松本市の公式LINEアカウントで「友だち追加」をしていただく必要があるのですが「LINEは使っていない・使いたくない」という声があがることも予想していました。導入2か月前まで紙対応を残すかどうか検討しており、市長にも一部紙対応を残すと説明していたほどです。ところが蓋を開けてみると「紙でほしい」という人は一人もおらず、全員が電子クーポンでの配布を希望していました。これには大変驚かされました。

    ――運用上はどのようなメリットがありましたか?

    島村さん:必要なものを必要なだけお渡しすることが容易になりました。電子クーポンは過去の記録が残るため、逐一誰に何を渡すのか確認する必要がありません。申請があればすぐに発行できますし、印刷の手間や費用もかかりません。

    ギフティが提供するシステムは直感的な操作性に強み

    ――今回の電子クーポンシステムはプロポーザルを経て、JTB長野支店とギフティとの座組みで受託しています。委託先の検討において重要視した点を教えてください。

    石神さん:子育て以外の用途でも市民生活サポートにデジタルを活用したいと考えていたため、発展性のあるシステムを提供してほしいという旨をプロポーザルの条件に盛り込みました。何よりギフティのシステムは利用者が直感的に操作できるシステムであることが決め手になりました。

    島村さん:アプリではなくWebブラウザ上で動作する仕様を採用したことで、インストールやバージョンアップが不要となり、誰でも簡単にアクセスできます。クーポンを家族で共有できる機能もあるため、主なユーザーである母親だけでなく、父親や祖父母も利用できる環境が整いました。

    汚損や紛失のリスクが消滅。子育て世帯に寄り添うクーポンに

    ――子育て支援クーポン電子化の効果や反応はいかがですか?

    熊井さん:3歳未満児クーポンの例で言うと、申請件数は令和5年度の1,275件から導入後の令和6年度は1,619件と伸びています。お母様たちが小さなお子さんを連れて窓口に来るのはかなりご負担になるため、空いた時間にLINEから情報を入力し、デジタルで発行が完結するという点にメリットがあると感じています。

    川上さん:紙のクーポンは利用時に必ず携帯する必要があったのですが、スマートフォンさえあれば利用できるようになったため利便性が向上したという声をもらっています。また、小さなお子さんのいる家庭だと紙クーポンを汚損したり紛失したりするケースも多かったのですが、電子化したことでその恐れはなくなりました。

    ――保育園などの加盟施設の反応はいかがでしたか?

    写真右から、保育課 主任 原俊輔さん、係長 等々力啓さん。松本市子育て支援クーポン事業を担当

    等々力さん:デジタル化される前は、施設で紙のクーポンを確認し、Excelにデータを入力し、松本市の保育課に利用されたクーポンを郵送してもらっていました。電子クーポン導入後はそれらがすべてデジタルで処理できるようになったため、事務作業はかなり軽減されています。

    原さん:一時預かりのクーポン発行のフローが複雑であるため、いつ何をどのようにチェックするか覚えるまでには苦労しました。ただシステム上のデータはきれいに整備されていますし、マニュアルも残っていますので、今後は大きな問題は生じないと思っています。

    ――行政にはどのようなメリットがありましたか?

    等々力さん:紙のクーポンを使用していたときは、利用履歴を提出してもらい、支払いの時に紙を1枚1枚数えて管理していました。紙を切って台紙に貼り付ける作業もあり、大きな作業負担となっていました。記録がすべて電子データ化されたことで、これらのフローがまるごとカットされたことは大きなメリットでした。紛失リスクが行政側からもなくなったことも助かっています。

    ボランティアに報いる「消防団施設利用補助クーポン」

    ――全国的にも珍しい取り組みのようですが、このクーポンの詳細を教えてください。

    消防防災課 主任(消防主任)平賀達也さん。消防団施設利用補助事業を担当

    平賀さん:全国の自治体と同じく、松本市でも消防団にはボランティアとして活動してもらっています。仕事を持ちながらも市民の安全のために活動してくださっている皆様に少しでも報いたいと考えていました。

    以前は飲食店で提示すると割引になるカードを配布していましたが、お店側のご厚意に甘える形になっており、協力店が減ってしまっていました。電子クーポン化によって予算を正式に計上できることになり、DX推進本部に掛け合って形にしてもらいました。

    クーポンの意図は生活支援よりも福利厚生です。ご家族と一緒に楽しんでいただけるよう、松本市内の映画館、スキー場、飲食店、カラオケボックスなどで利用できるようにしています。電子クーポンは家族間でシェアできる仕組みになっているので、配偶者やお子さんに楽しんでいただくこともできます。「家族に使われちゃった」と笑いながら話してくださる方もいて、企図通りでうれしく思います。

    ――クーポンの利用率や加盟店の状況を教えてください。

    「消防団施設利用補助」を電子化して家族共有可能にしたことで、団員の家族にも還元できるように

    平賀さん:市内約1,700名の消防団員のうち、約1,000名が登録してくれています。登録者のうち実際に利用したのは半数ほどで、まだ周知が十分でない面もあります。加盟店については当初は認知がなく理解を得るのに苦労しましたが、今では施設や店の側から「登録させてほしい」という申請が届くようになりました。次年度はさらに加盟店が広がると見込んでいます。

    島村さん:加盟店への説明・募集はクーポン事業の一番大変なところですが、交渉さえ済めばシステム上はすぐに登録できます。加盟店が増えていけば、その後一気に松本市全域に広がる可能性があります。

    食料支援のため急ピッチで進められた「松本市こそだて支援電子クーポン」

    ――「松本市こそだて支援電子クーポン」はどのような経緯で始まりましたか?

    こども福祉課 課長補佐 高頭千江子さん。松本市こそだて支援電子クーポン事業を担当

    高頭さん:昨年6月の市議会での「子育て世帯がお米の高騰で家族を食べさせるのに苦労している。何かできないか」という議員からの質問がきっかけです。同時期に国からの重点支援地方交付金を活用できる見込みが立ち、関係各課で議論の末、こども福祉課の事業として進めることになりました。

    現金給付の場合、振込先を確認するための用紙を送付し、返送を受けてから振込作業に着手でき、未完了時には個別対応も必要です。膨大な事務工数と予算負担が常に悩みの種でした。そのような状況で「消防団施設利用補助クーポン」がうまく機能しているという事例を聞き、電子クーポンの活用を検討しました。

    「松本市子育て支援クーポン」と利用者層が重複していることもあり、大きな混乱なく迅速な事業開始を実現

    ――既存2事業に比べて対象人数が膨大だったかと思います。周知はどのように行いましたか?

    高頭さん:子育て世帯が食べることに困っているという状況であったので、全庁がスピード感を持って進めていかなくてはならないと認識していました。そのため広報誌に載せる、ホームページで案内するといった方法はもちろんのこと、市長も記者会見で発表するなど協力をしてくれました。

    地道ですが、職員用の掲示板も利用しました。「まずは職員の皆さんが率先して利用してください、それからお知り合いの方に声をかけてください」とお願いしたのです。庁内の皆さんのお力をお借りしました。

    ――運用開始後の反応はいかがでしたか?

    高頭さん:物価高騰で食費がかさむなかで5,000円分を自由に使えるとあって、大変喜ばれました。高校生のお子さんのスマホに付与したり、一人暮らしの子どもにそのまま渡したりするケースもあったようです。

    また、問い合わせ対応はJTB長野支店が運営するサポートセンターで担っていただいたため、職員の通常業務への影響を抑えることができました。加盟店も電子のみの対応に一本化されたことで、覚えるべきことが整理され、現場として対応しやすくなったと思います。

    ※編集部追記:2026年3月からは、国の重点支援地方交付金を活用して「まつもと応援生活クーポン」(商工課)を同じくe街チケットポータル上で運用開始しています。

    庁内で草の根で普及を図り、活用シーン拡大を狙う

    ――これまでの取り組みをどのように総括していますか?

    島村さん:これまでの対象者はデジタルに親しんでいる世代が中心でした。今後は高齢者も対象範囲に含めていく必要があります。都市部では高齢者もキャッシュレスを使いこなしている実態があり、「使えない」という思い込みを打破するためにも、まずは使ってもらう機会を作ることが大切だと考えています。

    石神さん:DX推進本部では「何にでも使える、広く使える」ということを前提にシステムを導入しました。まだ電子クーポンに触れていない職員にもサンプルを体験してもらい、「これなら使える」「ここにも使える」と感じてもらうことで、活用の幅をさらに広げていきたいと思います。

    ※本文は2026年2月時点の情報です。

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