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子育て・高齢者向け3...

子育て・高齢者向け3事業を同一基盤で電子化。運用効率と住民満足度を両立

CASE
2026.04.24

住民向け給付ポータル

    子育て・高齢者向け3事業を同一基盤で電子化。運用効率と住民満足度を両立

    新潟県柏崎市

    豊かな自然が広がりつつ、暮らしに必要な中心機能がコンパクトにまとまっているため暮らしやすいと評判の街・柏崎市。市民サービスのDXを一歩進めるため、2024年1月から住民向け給付ポータル「e街チケットポータル」を導入。2種の子育て応援券と、高齢者向けのリハビリ施設の回数券を電子クーポンで配布しています。これにより市民はスマホでクーポン残高や期限を把握して使い忘れを防げるようになり、協力事業者のアナログな管理負担や精算ミスのリスクも解消されました。行政側では照合や管理の手間が省け、業務を大幅に圧縮することに成功しています。

    柏崎市の電子クーポン導入の経緯や運用の実態について、柏崎市の職員の皆様にお話しいただきました。

    目次

    導入対象の事業概要

    • かしわ★ざ★キッズ!スターチケット(子育て応援券)
      0歳から3歳までの子どもがいる世帯向けの子育て応援券。子ども1人につき年10,000円分を交付。おむつやミルクの購入、任意予防接種、産後の育児・家事支援など、市が認めた各種サービスにおいて1円単位で使える。

    • かしわ★ざ★キッズ!スターチケット@ホーム(家庭養育応援券)
      柏崎市独自の「1・2歳児の保育料無料化」や、国の「3歳児から5歳児までの保育料無償化」の対象となっていない、家庭で子どもを養育する世帯へ発行。子ども1人につき月5,000円分を交付。利用方法は「かしわ★ざ★キッズ!スターチケット」と同様。

    • パワーリハビリ回数券
      65歳以上の市民を対象に介護予防教室(パワーリハビリテーション)を実施。10回の導入プログラム修了後、対象施設でトレーニングを継続するための利用チケットを回数券形式で販売している。10回券は1,020円、30回券は2,550円。

    導入前の課題

    ・行政機能のDXを進めたいという全庁方針のもと、紙で給付している各種事業のデジタル化が急務だった
    ・システム構築費用が高額になる懸念があった。実際に令和3年度は予算の不足からクーポンのデジタル化を見送っていた

    成果

    ・国からの交付金を活用することで、予算の範囲内でクーポンをデジタル化することができた
    ・紙のクーポン券に比べ、照合・精算にかかる労力が大幅に減り、事務作業が軽減した
    ・市民の満足度が向上した。さらなるデジタル化を望む声も増え、市民のDXが前進した

    デジタルに抵抗の低い若年世帯から電子クーポンを導入

    ――柏崎市がクーポン券をデジタル化した理由・背景を教えてください。

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    企画政策課 情報統計係 主事 外山瞭平さん。全庁的な電子チケット化を推進している

    外山さん:検討の起点は令和2年度の市長所信表明でした。それまで紙で配布していた子育て応援券を、デジタル地域通貨のように利用してもらえないかと考え始めたのです。しかし当時はシステムの構築費用がかさむことがネックとなり、導入はいったん見送りとなりました。さらにその2年後、子育て支援部門のDXを推進するよう指示を受け、再検討を始めることになりました。

    ――スマホ利用に抵抗の少ない子育て世帯を対象に電子クーポンを配布することから始めると、市民のDXへ向けた良い流れを作れそうですね。

    子育て応援券の電子チケット券面イメージ。スマホ一つで使え、1円単位で決済できる利便性が住民から好評価

    外山さん:そうですね。もともと子育て世帯からは「電子の方が使いやすい」「精算はスマホでできた方がいい」という声があがっていました。そのため利用者側は比較的すんなりとデジタル化へ移行してくれました。

    かしわ★ざ★キッズ!スターチケット(以降「スタチケ」)で仕組みを構築でき、デジタル化の利点も改めて感じられたため、柏崎市ではもう一つの子育て応援券事業「かしわ★ざ★キッズ!スターチケット@ホーム」(以降「アットホーム」)や、高齢者向けのパワーリハビリ回数券(以降「パワリハ」)へもデジタル化を展開しました。

    紙のクーポンは加盟店に不利益をもたらしたことも

    ――電子クーポンの導入前にはどのような課題があったのですか?

    子育て支援課 育成支援係 主任 中村宗太さん。スタチケ事業を担当

    中村さん:紙のクーポン券を使用していたころは、加盟店に使用済みのチケットを提出してもらい、枚数や利用額、使用期限などを手作業で確認してから精算をしていました。お金にかかわる業務ですから一つひとつ慎重に取り組んでいましたが、どうしても人の目と手で行うことなので膨大な時間と労力がかかっていました。さらには保管・管理も大変で、使用済みのクーポンや必要書類の入った段ボール箱が山積みになっていました。

    ミスは加盟店や利用者側でも起こり得ます。クーポン券には利用できる期限があり、支払いの際に利用者や加盟店がこれに気づかずに使い、受理してしまうと、加盟店は市にその分の請求をすることができません。

    また加盟店が市への請求を忘れてしまい、市からの支払いを受けられないという事態も発生していました。これらの加盟店や利用者のミスは稀とはいえ、子育て支援に協力をしていただいている加盟店に不利益を生じさせてしまうことは大変心苦しく感じていました。

    介護高齢課 地域包括支援係 主任 前川絹絵さん。パワリハ回数券事業を担当

    前川さん:紙のパワリハ回数券は、回数券を申込後、市が納入通知書を郵送し、金融機関または市窓口でお支払いいただくというフローでした。「その場で支払いたい」「コンビニで支払いたい」との要望が以前からあり、「買いたいときにクレジットカード等ですぐ払える」という電子回数券の導入にはニーズがあると考えていました。

    パワリハは高齢者が対象であるため、電子回数券の普及が見込めるかという懸念はありましたが、事前のアンケートで56%の方が電子回数券の利用に肯定的であったため導入に踏み切ることにしました。

    紙券も併用することで、包括的に市民をサポート

    パワーリハビリ回数券の券面イメージ。スマホ上で電子スタンプを押下するだけで回数券の消し込みが完了

    ――電子チケットの利用に不安がある人にはどのようなアプローチをしましたか?

    前川さん:紙券も残しておくことで、利用者が好きな方を選べるようにしました。

    中村さん:スタチケは基本的には電子チケットとして配布することを想定していましたが、一部の加盟店は紙券のみの対応だったため、希望者には紙券で配布しています。

    外山さん:スタチケやアットホームの利用者層は電子チケットの利用に抵抗がないと想定されたので、店頭で2次元コードを利用者のスマホで読み込む方式を導入しました。一方、パワリハでは、利用者や施設職員からの声を元に、より操作感のある方式にすべく対象施設の職員が利用者のスマホに電子スタンプを押して消し込む仕組みを導入しました。スタンプ台紙のような画面に、実物のスタンプを当てることで利用済みとするシステムです。

    事業者決定からクーポン配布までは5カ月というスピード感

    ――電子チケットの導入を決めた際、パートナー会社にギフティを選んだのはなぜですか?

    外山さん:検討を始めた当初、スタチケのような電子商品券をデジタル化する仕組み作りの実績がある企業を調べた結果、ギフティが浮上しました。まずはどのようなサービスを提供してもらえるのかを知りたく、話をうかがったのがきっかけです。

    話を聞くうちに、ギフティは他の自治体でも類似事例をいくつも持っており、デジタル田園都市国家構想交付金(編集部注:現在の地域未来交付金)を受けられる枠組みのなかで事業を推進した実績があることがわかりました。その後、プロポーザルを経て、令和5年の10月には正式に契約することになりました。

    ――事業者選定後のフローを教えてください。

    外山さん:利用者の状況や事業者側の運用フローなどをギフティに伝えながら仕様書を整えていき、システムの導入に至りました。事業者を選定して5カ月後の令和6年1月にはスターチケットを電子チケットで配布開始しています。

    案内書の作成までギフティがサポート。高齢者への通知にはひと工夫

    ――利用者への通知はどのように行ったのですか?

    パワリハ電子回数券の案内書イメージ。対象者を想定し、文字やスクリーンショットを見やすい大きさに工夫

    外山さん:案内書を利用施設で配布してもらいました。ギフティには案内書の作成をお手伝いいただいています。案内書には「柏崎市チケットポータル」へアクセスするための2次元コードと、チケットを受け取るためのシリアルコードを記載しています。伝えたいことが正しく伝わるよう構成を考案してもらったほか、使い方のイメージがしやすいデザインを施してもらいました。自分たちでは作れないようなデザインや手順書を提供してもらえたと感じています。

    前川さん:パワリハ電子回数券の案内書も工夫して作っていただきました。スマホ画面や文字のサイズ、言い回しなど、スマホに不慣れな高齢者目線で工夫されており、スクリーンショットの撮り方やブックマークの保存方法までわかりやすく説明されていました。

    パワリハ電子回数券の開始から数カ月間は、購入の仕方が分からないという問い合わせがありましたが、一度ご利用いただくことで、利用者と施設職員ともに操作方法に慣れ、その後は問い合わせはほぼありません。

    保育課 保育係 主任 牧野文子さん。アットホーム事業を担当

    牧野さん:アットホームの案内は比較的シンプルでした。というのもアットホームの利用者はすでにスタチケを使った経験のある人ばかりだからです。同じシステムを使うので、こちらの運用は特にスムーズでした。

    子育て世帯は9割が電子チケットを選択

    クーポン利用の際は、加盟店ごとに設置してある2次元コードを利用者のスマホで読み取って決済。高額な端末などが必要ないため、加盟店にとっても導入ハードルは低い

    中村さん:スタチケは利用者の9割以上が電子チケットを選択しています。このように、多くの利用者が電子チケットを望んでいたものの、一部の加盟店が紙券のみを受け付けているため、電子に一本化はできていません。加盟店に電子チケットの魅力と利用率の高さをお伝えし、ご協力をいただければ、利用率を100%に近づけられるのではないかと考えています。

    前川さん:事前アンケートでは半数以上が肯定的だったパワリハの電子回数券ですが、実際の利用率は1割程度に留まっています。一方、電子で購入した人の半分はリピーターになっています。電子の利便性は継続的にお伝えしていきたいですね。

    市民の満足度は向上。行政も加盟店も負担が大幅に減った

    ――電子チケット導入後にどのような変化がありましたか?

    「令和7(2025)年度 柏崎市DX推進計画 進行管理報告書 (令和6(2024)年度実績分)」より。登録事業者(加盟店)や市職員の業務負担軽減という成果が明記されている

    中村さん:行政側は確認や精算にかかる業務量が大幅に圧縮されたことが最大のメリットです。今でも1割程度の方が紙のクーポンを利用されているので、精算業務が全くなくなったわけではありませんが、電子チケット導入前はこれが10倍あったと考えると恐ろしい思いです。デジタル化により物理的な紙の管理量も減ったので、場所にもゆとりができました。

    期限超過をしたクーポンが持ち込まれることもなくなったので、加盟店が不利益を被ることもなくなっています。これまでは加盟店にも請求処理の負担がのしかかっていたのですが、デジタル化したことで継続して加盟店となってくれる店舗もありました。

    また、業務負担を軽減できた分、本来向かうべき仕事に時間を割けるようになっています。先日、ある加盟店さんから「紙券の精算が大変だから辞めたい」という話がありました。そのときにむしろチャンスだと考え、「電子に移行すれば精算業務がなくなりますよ」とお伝えしたところ「それであれば電子に切り替えて継続します」ということになりました。この他、新たにスタチケに参加したいという加盟店さんにていねいに寄り添うことができるようになったのも、導入効果の一つだと感じています。

    利用者に関するアンケートは、令和6年と令和7年にそれぞれ1回ずつ実施しています。満足度は68%から84%へ、16ポイントも改善しました。「電子クーポンが良い」という回答は57%から65%へ、8ポイント改善しています。

    牧野さん:アットホームは、スタチケの電子クーポン導入後に開始した制度で、スタチケと同様に電子チケットの配布を基本としています。アットホームは保育園に通っていない期間が2カ月なら10,000円、3カ月なら15,000円と支給額が変わるため、紙クーポンであったら仕分け作業が非常に大変だったと思います。電子クーポンはシリアルコードを渡すだけで済むので、誤りもなく、業務時間を大幅に圧縮できています。

    クーポン事業を皮切りに、市民と行政の意識をアップデート

    ――今後、柏崎市はどのようにしてDXと市民サービスを両立させていくのでしょうか。

    外山さん:今回の施策により、デジタル化を進めることで利用者の利便性を向上させるとともに、従来の業務も大きく圧縮できることが改めて分かりました。企画政策課としては、原課のみなさんが積極的に動いてくださるおかげでデジタル化を推進できていると感じています。

    圧縮できた分のリソースをあてることで市民サービスを充実させていきたいと考えています。一方で、どうしてもデジタルに慣れるのに時間がかかってしまう方がいることは理解しています。どなたにも便利に使ってもらえるような仕組みを引き続き検討していきたいと思います。

    現在、具体的に検討しているDXは、市民への現金給付事務をデジタルギフトにする構想です。現在運用しているスキームでは、給付金を振り込むために市民の銀行口座の把握や確認が必要です。申請書の送付、口座情報の入力、不備確認といった対応に手間と時間がかかり、振込までに1〜2カ月を要することも少なくありません。口座確認を省略し、デジタルギフトとして送付できれば、より早期に支援を届けられるでしょう。また、現金は市外での消費や貯蓄に回る可能性もあります。「市内限定で使える電子チケット」として給付すれば、市内経済への循環を促す設計も可能です。

    これまでの経験で得られた知見は、他の行政手続きにも広げ、市民の意識改革やデジタル活用の第一歩にしたいと考えています。

    ※本文は2026年2月時点の情報です。

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